公的年金の見積もりと繰上げ・繰下げ

最終更新: 2026-09-07

退職後の家計は、公的年金をいくらと見込むかで姿が変わります。シミュレーター本体は、入力された引退後の手取り年収をそのまま使います。その額を出すための補助機能が収入の欄の「年金計算」で、厚生年金の加入年数と現役時代の平均額面年収から老齢基礎年金と老齢厚生年金を概算し、受給開始年齢に応じて増減させたうえで、税と社会保険料を引いた手取りに直します。反映ボタンを押すと、その手取り額がプランに書き込まれます。この記事では、その計算式と、意図して省いている要素を説明します。

採用している代表値

公的年金の目安(万円/年・1人分)

働き方額面手取り
会社員・現役の平均年収400万円172160
会社員・現役の平均年収550万円205185
会社員・現役の平均年収700万円238209
国民年金だけ(自営業など)8582

保険料を40年納め、65歳から受け取る場合です。額面も手取りも1人分ですが、手取りは年金収入だけの単身者として試算した値なので、2人世帯は2倍になりません。

この記事の内容

1階は納めた月数で、2階は現役時代の年収で決まる

日本の公的年金は2階建てです。1階は老齢基礎年金で、保険料を納めた月数だけで決まります。2階は老齢厚生年金(報酬比例部分)で、こちらは現役時代の報酬と厚生年金に入っていた期間で決まるので、年金計算機能は両者を別々に計算して足し合わせています。上の表の「額面」はこの合計です。

老齢基礎年金 = 84.73万円 × 納付月数 ÷ 480

満額は2026年度の額。480ヶ月は40年に当たります

報酬比例部分 = 平均標準報酬額 × 給付乗率 × 厚生年金の加入月数

給付乗率は 5.481 / 1000(2003年4月以降の期間に適用される率)

平均標準報酬額には、入力された平均額面年収を12で割った値を使います。表の「国民年金だけ」の行には2階がありません。だから1階の満額が、そのまま額面です。会社員の行どうしの差は、すべて2階の差です。

上限も2つあります。厚生年金の加入年数は70歳まで加入できることから逆算した年数までとし、年収にも次の上限を置いています。

計算に使う上限

項目上限
年金額に算入される年収1230万円
厚生年金の加入年数52年

年収の上限は、標準報酬月額の上限を12ヶ月分にしたものと標準賞与額の上限を年3回分にしたものの合計で、これを超える年収を得ていても年金額には反映されません。年収が高い人ほど、収入に対する年金の割合は小さくなります。

受け取り始める年齢で、額は一生変わる

受給開始は60歳から75歳まで選べます。65歳より早めれば1ヶ月あたり一定の率で減り、遅らせれば増えます。増減は一生続きます。

受給開始年齢による増減

選択1ヶ月あたり限度まで選んだ場合
繰上げ(最短60歳)−0.4%−24%
繰下げ(最長75歳)+0.7%+84%

繰上げの減額率は昭和37年4月2日以降に生まれた人に適用される率で、それより前に生まれた人の減額率はこれより大きくなります。

受給開始年齢と引退年齢は別のものです。繰り下げながら働き続けることもできますし、早めに引退して年金だけ繰り下げることもできます。年収カーブを使っているプランでは、反映のときに受給開始年齢で収入の区間を切り、受給開始が働いている期間の途中に落ちるなら、その期間を給与と年金を合算した区間として組み直します。年収カーブを使っていないプランでは、反映した額は「引退後手取り年収」の欄に入り、引退年齢から計上されます。この場合、受給開始年齢は年金額の増減にだけ効きます。

手取りに直してから家計に載せる

年金にも税と社会保険料がかかります。額面のまま家計に載せると、退職後に使えるお金を多く見積もってしまいます。だから年金計算機能は手取りに換算した額を反映します。上の表の「手取り」も、次の手順で額面から求めた値で、想定は65歳以上で年金収入だけの単身者です。

  • 公的年金等控除を額面から引いて、所得を求める
  • 国民健康保険料と介護保険料を、所得に応じて概算する
  • 残りから基礎控除を引いて、所得税と住民税を求める
  • 額面から社会保険料と税を引いたものが手取り

国民健康保険料と介護保険料は市区町村ごとに料率が違うので、東京23区の水準を参考にした所得割と均等割で近似しました。所得税の税率は、年金だけの収入なら課税所得がいちばん低い区分に収まるものとして計算しています。

この計算の限界

次の点は計算に反映していません。結果を読むときはこの前提を踏まえてください。

  • 報酬比例部分は2003年4月以降の給付乗率で全期間を計算していて、それより前に厚生年金に加入していた期間に使われるより高い乗率の経過措置は反映していません。長く働いてきた人の年金は、ここより多くなる可能性があります。
  • 加給年金と振替加算は計算に含めていません。配偶者がいる場合の上乗せは反映されません。
  • 在職老齢年金による支給停止を考慮していません。働きながら年金を受け取り、賃金と年金の合計が一定額を超える場合、実際には年金の一部が止まります。
  • 経過的加算・付加年金・国民年金基金・厚生年金基金は扱っていません。
  • 遺族年金と障害年金は対象外です。老齢年金だけを計算しています。
  • 手取り換算は、単身を前提とした概算です。世帯の構成や自治体によって、実際の保険料は変わります。
  • 将来の制度改正や、マクロ経済スライドによる給付水準の調整は織り込んでいません。今の制度がそのまま続く前提の計算です。

出典

関連する考え方


本記事および本サービスの計算結果は、公的統計と一般的な制度に基づく概算であり、特定の金融商品の購入や投資判断を勧めるものではありません。税制・社会保障制度は改正されます。実際の手続きや判断にあたっては、一次情報および専門家にご確認ください。