3人目を持つと家計はどうなるか。増える分だけを数える
最終更新: 2026-07-27「2人でこれだけかかっているのだから、3人なら1.5倍」。3人目を考えるとき、まず浮かぶのはこの不安だと思います。ところが日本の制度は、3人目にかなり大きく傾いています。かといって「無償化があるから大丈夫」とも言えません。条件を外すと消えるからです。増える分と減る分を、制度の実額で並べます。
この記事の結論
- 理想の子ども数は平均2.25人、実際に予定する数は2.01人。差の理由として最も多いのが「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」(52.6%)。この記事はその差額を数える試みです。
- 児童手当は第3子以降が月3万円。高校卒業までの総額は第1子・第2子の約234万円に対して約648万円で、差は約414万円。
- 0〜2歳の認可保育料は、同時に通う子を年長順に数えて第2子が半額・第3子以降は無償(国基準)。中位の所得帯なら3年間で約126万円が0円になる。
- 2025年度から、扶養する子が3人以上の世帯は大学等の授業料が所得制限なしで減免される。私立大学なら4年間で最大約306万円(授業料 年70万円・入学金26万円が上限)。
- ただしこの無償化は「3人以上を同時に扶養している期間」が条件。子どもの年齢差が開くと、上の子が扶養から外れた時点で対象外になりうる。ここが最大の落とし穴。
この記事の内容
- 「お金がかかるから」で止まっている人が最も多い
- 減る分①: 児童手当の第3子加算
- 減る分②: 0〜2歳の保育料
- 減る分③: 2025年度からの大学授業料無償化(ただし条件つき)
- 増える分: 制度では埋まらないもの
- 検証記録: 2人の家計と3人の家計
- 3人目を考えるときに確かめる5つ
「お金がかかるから」で止まっている人が最も多い
国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査では、夫婦の平均理想子ども数は2.25人、平均予定子ども数は2.01人でした。差は0.24人。理想の数まで持たない理由として最も多く挙げられたのは、費用です。
子育てや教育にお金がかかりすぎるから
つまり多くの人が金額を理由に決めているのに、その金額を具体的に数えた人は少ない、という状態です。以下は制度で決まっている分だけを積み上げたものです。世帯の事情で変わらない部分から見ていきます。
減る分①: 児童手当の第3子加算
2024年10月の改正で、児童手当は所得制限が撤廃され、高校生年代まで支給されるようになりました。第1子・第2子は3歳未満で月1.5万円、3歳以降は月1万円。第3子以降は年齢を問わず月3万円です。
0歳から高校卒業までに受け取る児童手当の総額
| 月額 | 総額 | |
|---|---|---|
| 第1子・第2子 | 1.5万円(3歳未満)→ 1万円 | 234万円 |
| 第3子以降 | 3万円(一律) | 648万円 |
| 差 | — | 414万円 |
同じ期間で比べると、3人目には1人目・2人目より約414万円多く支給される計算になります。「3倍かかる」という直感が最初に崩れるのはここです。
第3子かどうかの数え方には注意点があります。数え上げの対象は「22歳年度末まで」の子で、支給対象(高校生年代まで)より広く取られているため、長子が大学生になっても、その子を含めて数えたうえで3人目に加算がつきます。ただし長子が22歳年度末を過ぎると数え上げから外れ、下の子の「第3子」は「第2子」に繰り上がって、月3万円から月1万円に下がります。
減る分②: 0〜2歳の保育料
3〜5歳は幼児教育・保育の無償化で授業料相当が0円ですが、0〜2歳は所得に応じた保育料がかかります。ここに多子軽減があります。保育所等に同時に通う就学前の子を年長順に数え、第2子は50%引き、第3子以降は無償(国基準)。
0〜2歳の認可保育料(中位の所得帯・年42万円の場合)
| 保育料 | 3年間の合計 | |
|---|---|---|
| 第1子 | 42万円 | 126万円 |
| 第2子(半額) | 21万円 | 63万円 |
| 第3子以降(無償) | 0円 | 0円 |
この条件なら、3人目の0〜2歳の保育料は3年間で約126万円が0円になります。ただし条件は「同時に通っている」こと。年齢差が開けばカウントから外れます。ここでも効いてくるのは年齢差です。
自治体によっては、年齢差の条件を撤廃したり、第2子以降を独自に無償にしているところがあります(東京都は2025年9月から0〜2歳の保育料を無償化)。お住まいの自治体の基準表を確認してください。マネシムなら「保育料が無償の自治体」の設定で0円にできます。
減る分③: 2025年度からの大学授業料無償化(ただし条件つき)
判断に最も大きく効くのは2025年度に始まった多子世帯支援で、扶養する子が3人以上いる世帯は大学等の授業料と入学金が一定額まで減免されます。しかも所得制限がありません。従来の修学支援新制度と決定的に違うのがこの点です。
多子世帯(扶養する子が3人以上)の授業料等減免の上限額
| 入学金 | 授業料(年額) | |
|---|---|---|
| 国公立大学 | 28万円 | 54万円 |
| 私立大学 | 26万円 | 70万円 |
私立大学に4年通う場合、授業料 年70万円 × 4年 + 入学金26万円で、1人あたり最大約306万円が減免されます。対象は3人目だけではありません。要件を満たす期間に在学していれば子ども全員が減免を受けられるので、3人目が加わることで1人目と2人目の学費まで下がりうるということです。
落とし穴: 「同時に3人扶養」の期間しか使えない
要件は「生計維持者が扶養する子が3人以上」であることです。判定は申込時と在学中の申告時に行われるので、長子が就職して扶養から外れると、下の子がまだ在学中でも要件を満たさなくなることがあります。
つまりこの制度の恩恵は、子どもの年齢差に強く依存します。在学期間が重なるほど有利です。差が開くほど恩恵はしぼみます。同時に3人を扶養している期間が短くなるからです。年齢差の話は体力や保育の都合として語られがちです。金額の面でも効いています。
所得制限はありませんが、資産要件があります(資産の合計が3億円未満)。自動では適用されません。申請が要ります。減免されるのは上限まで。実際の授業料が上限を超える分は自己負担です。制度の詳細と最新の要件は、必ずJASSOと文部科学省のページで確認してください。
増える分: 制度では埋まらないもの
ここまでは減る分でした。実際に増えるのは制度が肩代わりしてくれない日常のコストで、マネシムは養育費(教育費とは別の生活コスト)を年齢帯ごとに置いています。
子ども1人あたりの養育費(マネシムの既定値・万円/月)
| 年齢帯 | 月額 |
|---|---|
| 0〜2歳 | 3万円 |
| 3〜5歳 | 3万円 |
| 小学生 | 5万円 |
| 中学生 | 6万円 |
| 高校生 | 6万円 |
| 大学生 | 3万円 |
0歳から22歳までを積み上げると1人あたり約1,152万円です。中心は食費・衣類・日用品。3人目でも大きくは減りません。おさがりが効くのは衣類と一部の用品だけです。
これに進路由来の教育費が乗ります。公立に通う場合の目安は小学校で年11万円、中学校で年19万円で、私立に進むと桁が変わります(私立小学校は年103万円)。負担額を左右する最大の変数は、制度ではなく進路の選び方です。
金額に出にくいものとして、住居と車もあります。部屋数が足りなくなれば家賃や住宅の広さの前提が変わりますし、車も5人乗りで足りるかという問題が出ます。どちらも「子ども1人あたり」では計算できません。段差として一度に来ます。
検証記録: 2人の家計と3人の家計
違いは子どもの人数だけ。収入・住まい・進路の方針は同じにしてあります。マネシムは0〜2歳保育料の多子軽減を自動で計算し、児童手当も収入タブでオンにすれば多子加算まで含めて反映します。3人目を1人追加すれば、増分がそのまま線に出ます。
ケースA: 子ども2人(2歳差)
- 共働き・世帯の手取りは同じ
- 進路は保育園から大学まで公立・国公立
- 養育費はマネシムの既定値(0〜2歳 月3万円ほか)
- 住居は変えない
ケースB: 子ども3人(2歳差)
- ケースAに3人目を追加しただけ
- 0〜2歳保育料の多子軽減が自動で反映される(児童手当の第3子加算は収入タブでオンにして計上)
- 大学は3人とも在学期間が重なる前提
年齢差を変えたケースも作ってみてください。6歳に広げると、保育料の多子軽減と大学の多子世帯支援の両方が効きにくくなり、同じ3人でも必要額が変わります。制度の設計が「同時に扶養している」ことを前提にしているためです。
3人目を考えるときに確かめる5つ
- 自分の自治体の0〜2歳保育料と、多子軽減の条件(年齢差の制限があるか、独自の無償化があるか)
- 大学の多子世帯支援を使える期間(3人を同時に扶養しているのは何年か)
- 進路の方針(公立中心か私立か)。3人目の総額はここで倍近く変わる
- 住居を広げる必要があるか。必要なら、その時期と金額
- 働き方をどうするか(3人目の育休・時短で世帯収入がどれだけ下がるか)
最後の項目は制度の話ではありませんが、金額では最も大きくなることがあり、本当に効くのは支出の増加より収入の変化のほうです。育休・時短の期間と復帰後の収入を入れて計算してください。
よくある疑問
本当に3人目のほうが2人目より負担が軽いのですか?
制度から受け取る分は3人目のほうが大きくなります。児童手当で約414万円、0〜2歳保育料で約126万円、大学の多子世帯支援で最大で1人あたり約306万円。一方で養育費と教育費は人数分そのまま増えます。合計が軽くなるかは進路と年齢差しだいです。必ず自分の条件で計算してください。
大学の無償化は、3人目が生まれた時点で使えるのですか?
使えるのは在学中の子どもの授業料等です。その子が生まれた時点で長子が大学生であれば、その長子が対象になります。逆に、3人目が大学生になる頃に長子が扶養から外れていれば、その時点では要件を満たさない可能性があります。判定は申込時と在学中の申告時に行われます。
所得が高いと対象外ですか?
多子世帯(扶養する子が3人以上)の授業料等減免に所得制限はありませんが、資産要件(3億円未満)があります。資産が5,000万円以上なら、授業料等減免のみで給付奨学金は対象外です。児童手当も2024年10月から所得制限が撤廃されています。
年齢差はどのくらいが有利ですか?
この記事で扱った制度は、0〜2歳保育料の多子軽減も大学の多子世帯支援も「同時に扶養している」「同時に通っている」ことを条件にしています。だから年齢差が小さいほど恩恵は大きくなります。ただし保育・受験・進学が同時期に重なるので、支出のピークは高く鋭くなります。総額とピークのどちらが厳しいかは家計次第です。両方の年齢差で試算して比べてください。
この記事の前提と限界
次の点は計算に反映していません。結果を読むときはこの前提を踏まえてください。
- 保育料は自治体ごとの階層表で決まります。この記事の金額は所得帯の中位を代表させた概算です。実額は住民税の所得割額と自治体の基準表で確認してください。
- 多子世帯の授業料等減免は上限額です。実際の授業料が上限を超える分、施設費・実習費などは自己負担になります。制度の要件は改正されます。
- 児童手当・保育料・授業料減免はいずれも申請が必要です。自動的には適用されません。
- 住居の広さ・車の買い替え・育休や時短による収入の変化は、この記事の増分の計算に含めていません。金額としてはこれらが最も大きくなることがあります。
出典
- 日本学生支援機構(JASSO) 多子世帯支援について
扶養する子が3人以上の世帯の授業料等減免(所得制限なし・資産要件あり)と上限額
- 文部科学省 高等教育の修学支援新制度
2025年度から始まった多子世帯の授業料等無償化の制度説明
- こども家庭庁 児童手当制度のご案内
2024年10月改正後の支給額・支給対象・多子加算の数え方
- こども家庭庁 幼児教育・保育の無償化
3〜5歳の無償化の範囲と、0〜2歳の取り扱い
- 国立社会保障・人口問題研究所 第16回出生動向基本調査 結果の概要
平均理想子ども数2.25人・平均予定子ども数2.01人、理想を下回る理由
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