持ち家か賃貸か、戸建てかマンションか。答えが人によって逆になる理由を数字で分ける

最終更新: 2026-09-07

家賃を払い続けるのはもったいない、と言われて物件を見に行く。帰り道には、いまの金利で35年も借りて大丈夫かと不安になる。持ち家か賃貸かで迷っている人は、たいていこの往復の途中にいます。答えは人によって逆になります。ただし、逆になる場所は決まっています。金利、住む年数、35年後に売れる価格。この3つを、公的な数字とマネシムのローン計算で追います。

この記事の結論

  • 同じ35年で並べると、5,000万円の持ち家は約6,378万円、家賃12万円の賃貸は約5,040万円。差は約1,338万円で、持ち家が有利になるかどうかは「35年後にその住戸が1,338万円以上で売れるか」で決まる。
  • 金利で前提が動く。5,000万円を35年・固定0.7%で借りると総返済は約5,639万円。毎年0.2%ptずつ上がって3%で止まると約7,353万円で、差は約1,714万円。月々の返済も13.4万円から最大18.8万円まで動く。
  • マンションの修繕積立金には国土交通省の目安がある。70㎡なら中規模で月1.8万円前後、20階以上で月2.4万円前後。35年分で739万円〜995万円。販売時の提示額がこれより大幅に低ければ、あとで上がる。
  • 戸建てかマンションかは、修繕費を毎月強制的に積むか、自分の裁量で積むかの違い。必要な金額そのものはどちらも消えない。
  • 賃貸の弱点は老後に出る。65歳以上の無職世帯の持家率は95.8%。収入が年金だけになっても家賃は下がらず、入居審査は通りにくくなる。

この記事の内容

いま家を買う人は、いくら払っているか

まず実額から。住宅金融支援機構が、フラット35を使って家を買った人の購入価格を毎年まとめています。2024年度の全国平均です。

2024年度フラット35利用者調査(全国平均)

区分金額
土地付注文住宅5,007万円(建設費3,512万円 + 土地1,495万円)
新築分譲マンション5,592万円
土地付注文住宅・首都圏5,464万円
土地付注文住宅・その他地域4,522万円

土地付注文住宅は、首都圏とその他地域で約942万円の開きがあります。家賃の地域差はよく話題になりますが、購入価格にも同じ幅で地域差が出ています。

5,000万円を35年借りると、返す総額は約5,639万円になる

5,000万円を35年・元利均等・固定金利0.7%で借りた場合を、マネシムの住宅ローン計算に通します。隣には、金利が毎年0.2%ptずつ上がって3%で止まるシナリオを置きます。

5,000万円・35年・元利均等の返済

固定0.7%毎年+0.2%pt(上限3%)
初回の月返済額13.4万円13.4万円
期間中の最大月返済額13.4万円18.8万円
総返済額5,639万円7,353万円
うち利息639万円2,353万円

固定0.7%のままなら利息は約639万円、3%まで上がる展開なら約2,353万円。差は約1,714万円。月々の返済も13.4万円から最大18.8万円まで動くので、変動金利を選ぶかどうかは、この幅を家計が受け止められるかという判断になります。

変動金利には、返済額の見直しを5年に1度に留める「5年ルール」と、見直し時の増額を前回の125%までに抑える「125%ルール」があります。返済を軽くしてくれる仕組みに見えますが、増えた利息を後ろへ送っているだけで、送られた分は未払利息として残ります。計算の詳細は「住宅費と住宅ローンの計算」にあります。

買ったあとも毎月出ていくお金

ローンを返し終えても、持ち家の支出は止まりません。マンションなら修繕積立金と管理費、戸建てでも税金と修繕費が続き、このうち修繕積立金については、国土交通省が実際の長期修繕計画366事例から算出した専有面積1㎡当たりの月額を目安として公表しています。

修繕積立金の目安(専有面積1㎡当たり月額・機械式駐車場分を除く)

建物の区分平均値事例の3分の2が収まる幅70㎡換算
20階未満・延床5,000㎡未満335円235〜430円月2.4万円
20階未満・5,000〜10,000㎡未満252円170〜320円月1.8万円
20階未満・10,000〜20,000㎡未満271円200〜330円月1.9万円
20階以上338円240〜410円月2.4万円

70㎡の住戸なら、20階未満の中規模マンションで月1.8万円、20階以上なら月2.4万円。35年分にすると739万円〜995万円です。管理費は別にかかり、機械式駐車場があれば1台あたり月6,450円(2段ピット1段昇降式)が上乗せされます。

販売時に提示される積立金が、この目安よりかなり低い物件があります。低く始めた分は消えません。将来の増額か一時金の形で戻ってくるので、購入前に長期修繕計画をこの表と見比べておくだけで、あとから上がる額の見当がつきます。

固定資産税は4年目に上がる

持ち家には固定資産税(標準税率1.4%)がかかり、市街化区域なら都市計画税(制限税率0.3%)も加わります。新築住宅は一定の要件で家屋分の固定資産税が3年間(3階以上の耐火建築物は5年間)半額になり、その期間が終わると税額が上がります。「4年目から急に高くなった」と言われるのはこれです。

持ち家と賃貸を35年で並べると、問いが変わる

5,000万円のマンションを買う場合と、家賃12万円の賃貸で暮らす場合。住居費だけを、同じ35年間で並べます。

35年間の住居費(概算)

持ち家賃貸
ローン総返済額5,639万円—
修繕積立金(中規模・平均値)739万円—
家賃—5,040万円
合計6,378万円5,040万円

6,378万円 - 5,040万円 = 1,338万円

持ち家が多く払う分。35年後に手元に残る住戸がこの金額以上の価値なら、持ち家のほうが有利になる

持ち家のほうが約1,338万円多く払います。埋めるのは、35年後に手元に残る住戸。だから「どちらが安いか」を計算しても結論は出ず、問いは「35年後にその住戸が1,338万円以上で売れるか」に置き換わります。

都心の駅近と人口が減る地域では、答えは正反対。持ち家か賃貸かの議論がいつまでも噛み合わないのは、答えが人によって逆を向いているからです。

上の表には管理費・固定資産税・購入時の諸費用(仲介手数料・登記費用・不動産取得税)・団体信用生命保険料と、賃貸側の更新料・引越し費用を入れていません。どちらにも上乗せがあり、項目の数は持ち家側のほうが多くなります。住宅ローン控除(控除率0.7%・最長13年)は持ち家側の負担を下げます。ここでは反転する条件を見るために、両者に共通しない大きな項目だけを置きました。

住む年数が短いほど、賃貸に寄る

購入時の諸費用と売却時の仲介手数料は、住む年数で割って考える一時費用です。10年で手放すなら、年あたりの負担を大きく押し上げます。逆に完済後も住み続けるなら、ローンが終わったあとの住居費は修繕積立金と税金だけになり、賃貸との差は年々開いていきます。

賃貸の弱点は、総額より老後に出る

総額の比較で賃貸が負けるとは限りません。弱点は別にあります。収入が年金中心になっても、家賃は下がりません。家計調査では65歳以上の無職世帯の持家率が95.8%で、統計上の「老後の平均的な家計」に入っている住居費は月1.6万円ですから、家賃12万円の家計はこの平均より月10万円ほど重いところから老後を始めることになります。

審査の壁もあります。高齢になると入居審査が通りにくくなり、保証人か家賃債務保証を用意する必要が出てきます。住み替えの自由は賃貸の利点ですが、それが効くのは体力があるうちです。

持ち家の弱点は2つ。住み替えられないことと、資産価値が下がる地域では損失が確定することです。どちらの弱点が自分に痛いかは、勤務先の安定性・親の家の有無・地域の人口動態で変わり、金額の計算だけでは決まりません。

戸建てかマンションかは、修繕費の払い方の違い

ここまでは持ち家と賃貸の話でした。買うと決めたあとの「戸建てかマンションか」は、別の軸。混ぜると判断がにじむので、分けて置きます。

戸建てには修繕積立金も管理費もありません。ただ、外壁・屋根・給湯器・シロアリ対策の費用は同じように来ますし、マンションなら管理組合が毎月強制的に積み立ててくれるものを、戸建てでは自分で積んでおくか必要になったときに一括で出すかを自分で決めることになります。違いは払い方。必要額そのものは大きく変わらず、裁量があることは計画的に積める人には有利に、積めない人には不利に働きます。

検証記録: 同じ人生を買う場合と借りる場合で引く

住まい以外を完全に同じにした2つのプランです。老後まで通した資産推移を見ると、差が開く時期がはっきりします。

ケースA: 5,000万円のマンションを35年ローンで買う

  • 借入5,000万円・金利0.7%・元利均等・35年
  • 月返済 13.4万円
  • 修繕積立金 月1.8万円(70㎡・中規模の平均値)を生活費に上乗せ(住宅の欄には修繕費の項目が無い)
  • 完済後も同じ住戸に住み続ける

ケースB: 家賃12万円の賃貸で暮らし続ける

  • 家賃 月12万円が生涯続く
  • 住まい以外の条件はケースAと同じ
  • 老後も同じ家賃を払い続ける前提

ローン返済中は持ち家のほうが月々の支出が大きく、資産の増え方は鈍ります。逆転するのは完済後です。老後は賃貸側の家計が家賃の分だけ重くなるので、どちらの線が上で終わるかは、完済の時期と寿命のどちらが先に来るかにも左右されます。

決める前に確かめる5つ

  • 何年住むつもりか。10年以内に手放す可能性があるなら、購入時と売却時の一時費用を年割りで確認する
  • 変動金利なら、金利が3%まで上がったときの月返済額を払えるか
  • マンションなら、長期修繕計画の積立額を国土交通省の目安と比べる。機械式駐車場があるかも見る
  • 完済年齢が何歳になるか。退職後にローンが残るなら、退職金で返す前提になっていないか
  • その物件は35年後に売れる立地か(人口動態・駅距離・建て替えの見通し)

この5つに答えが出れば、持ち家と賃貸のどちらが自分に向くかは計算で決まります。出発点は、一般論の正解を探すのをやめることです。

よくある疑問

住宅ローン控除があるなら、やはり買ったほうが得ですか?

住宅ローン控除は年末残高の0.7%を所得税等から差し引く制度で、省エネ基準に適合する新築住宅なら最長13年間使えます。負担は確実に下がります。ただし借入限度額は住宅の性能で異なり、入居年によっても変わります。自分の物件が対象になるかを国税庁のページで確かめてから、計算に入れてください。

「家賃を払うのはもったいない」は正しいですか?

持ち家でも、利息・修繕積立金・固定資産税・管理費は資産として残りません。5,000万円を35年借りれば、利息だけで約639万円(固定0.7%)から約2,353万円(3%まで上がる場合)になります。資産として残るのは住戸の売却価値の分で、支払総額がそのまま資産に変わるわけではありません。

戸建てとマンションはどちらが維持費が安いですか?

マンションは修繕積立金と管理費が毎月かかります。戸建てはその代わりに、外壁・屋根・設備の更新を自分で負担します。ならせば必要額は大きく変わりません。違いは、支払いが毎月に平準化されているか、10年〜20年ごとに数百万円単位でまとまって来るかで、後者は資金計画の難しさとして効きます。

タワーマンションは修繕積立金が高いのですか?

国土交通省の目安では、20階以上の平均値は338円/㎡・月です。外壁修繕に特殊な足場が要り、共用部分の割合も大きいぶん、20階未満の区分より高くなっています。70㎡なら月2.4万円前後。

この記事の前提と限界

次の点は計算に反映していません。結果を読むときはこの前提を踏まえてください。

  • ローンの計算は元利均等・繰上返済なし・団体信用生命保険料を含まない概算です。金利上昇のシナリオは「毎年0.2%ptずつ上がって3%で止まる」という仮定にすぎず、予測ではありません。
  • 購入時の諸費用(仲介手数料・登記費用・不動産取得税・印紙税)と売却時の費用、賃貸側の更新料・引越し費用はこの記事の比較に含めていません。
  • 住宅の資産価値と将来の売却価格は予測できません。この記事は「いくらで売れれば有利になるか」という条件を出すところまでで、価格の見通しは扱いません。
  • 固定資産税・都市計画税の税率は自治体の条例で定まり、軽減措置の要件も改正されます。金額は課税明細書と自治体の案内で確認してください。
  • 住宅ローン控除の借入限度額・要件は入居年と住宅の性能で異なります。最新の要件は国税庁の該当ページを参照してください。

出典

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