持ち家か賃貸か、戸建てかマンションか。答えが人によって逆になる理由を数字で分ける

最終更新: 2026-07-26

持ち家と賃貸のどちらが得かという話は、たいてい「家は資産になる」「賃貸は一生家賃を払い続ける」で終わってしまいます。ところが同じ条件で計算してみると、この判断は金利・住む年数・売れる価格の3つでかんたんに反転します。反転する場所はどこか。公的な数字で特定します。

この記事の結論

  • 比べるべきは総支払額ではない。同じ35年で見ると持ち家は約6,378万円、家賃12万円の賃貸は約5,040万円。差は約1,338万円で、判断は「35年後にその金額以上で売れるか」という問いに置き換わる。
  • 金利が動くと前提が壊れる。5,000万円を35年・固定0.7%で借りると総返済は約5,639万円。同じ借入で金利が毎年0.2%pt上がり3%で止まると約7,353万円。差は約1,714万円。
  • マンションの修繕積立金には国土交通省の目安がある。70㎡なら月1.8万円前後、20階以上なら月2.4万円前後。新築時の提示額がこれより大幅に低ければ、後から上がる。
  • 戸建てとマンションの差は「修繕費を自分で積むか、強制的に積まされるか」。総額はどちらも避けられない。
  • 賃貸の弱点は総額ではなく老後。収入が年金だけになっても家賃は下がらず、入居審査は通りにくくなる。

この記事の内容

いくら払うのか(まず実額を置く)

議論の前に、いま家を買っている人がいくら払っているかを、住宅金融支援機構が住宅ローン利用者を対象に毎年公表している調査の2024年度版で見ます。

2024年度フラット35利用者調査(全国平均)

区分金額
土地付注文住宅5,007万円(建設費3,512万円 + 土地1,495万円)
新築分譲マンション5,592万円
土地付注文住宅・首都圏5,464万円
土地付注文住宅・その他地域4,522万円

土地付注文住宅では、首都圏とその他地域で約942万円の差。住む場所の話は、家賃だけの問題ではありません。同じ幅で購入価格にも効いています。

5,000万円を35年借りると、返すのは5,000万円ではない

5,000万円を35年・元利均等・固定金利0.7%で借りた場合を、マネシムの住宅ローン計算に通してみます。

5,000万円・35年・元利均等の返済

固定0.7%毎年+0.2%pt(上限3%)
初回の月返済額13.4万円13.4万円
期間中の最大月返済額13.4万円18.8万円
総返済額5,639万円7,353万円
うち利息639万円2,353万円

金利が0.7%のままなら利息は約639万円、毎年0.2%ptずつ上がって3%で止まる展開なら約2,353万円です。差は約1,714万円。月々の返済額も13.4万円から最大18.8万円まで動くので、変動金利を選ぶかどうかは、この幅を受け止められるかという判断になります。

変動金利には、返済額の見直しを5年に1度に留める「5年ルール」と、見直し時の増額を前回の125%までに抑える「125%ルール」があります。これは支払いを軽くする仕組みではありません。増えた利息を後ろに送る仕組みです(未払利息)。計算の詳細は「住宅費と住宅ローンの計算」にあります。

買った後に毎月出ていくお金

持ち家の判断を狂わせるのは、ローン返済のあとに続く固定費です。なかでも大きいのがマンションの修繕積立金で、これについては国土交通省が実際の長期修繕計画366事例から算出した目安を公表しているので、これを比較の土台にしていきます。

修繕積立金の目安(専有面積1㎡当たり月額・機械式駐車場分を除く)

建物の区分平均値事例の3分の2が収まる幅70㎡換算
20階未満・延床5,000㎡未満335円235〜430円月2.4万円
20階未満・5,000〜10,000㎡未満252円170〜320円月1.8万円
20階未満・10,000〜20,000㎡未満271円200〜330円月1.9万円
20階以上338円240〜410円月2.4万円

70㎡の住戸なら、20階未満の中規模マンションで月1.8万円、20階以上なら月2.4万円が目安で、35年分では739万円〜995万円になります。これは管理費とは別で、機械式駐車場があるとさらに加算されます(2段ピット1段昇降式で1台あたり月6,450円)。

販売時に提示される修繕積立金が、この目安よりかなり低いことがあります。ただし総額は変わりません。低く始めた分は、将来の増額か一時金として戻ってくるので、購入前に長期修繕計画を見て上のガイドラインと比べるだけでも、見通しは大きく変わります。

税金と、戸建ての場合

持ち家には固定資産税(標準税率1.4%)と、市街化区域なら都市計画税(制限税率0.3%)がかかります。新築住宅は一定の要件で家屋の固定資産税が3年間(3階以上の耐火建築物は5年間)半額になる措置があり、その期間が終わると税額が上がります。「4年目から急に高くなった」と言われるのはこれです。

戸建てには修繕積立金も管理費もありません。ただし外壁・屋根・給湯器・シロアリ対策の費用が消えるわけではありません。自分で積んでおくか、必要なときに一括で出すかの違いです。強制的に積み立てられるマンションと、自分の裁量に任される戸建てで、必要額そのものは大きく変わらず、裁量があることは有利にも不利にも働きます。

比較の形を変える: 「どちらが安いか」ではなく「いくらで売れれば勝ちか」

5,000万円のマンションを買う場合と、家賃12万円の賃貸で暮らす場合。同じ35年間で並べます。

35年間の住居費(概算)

持ち家賃貸
ローン総返済額5,639万円
修繕積立金(中規模・平均値)739万円
家賃5,040万円
合計6,378万円5,040万円

6,378万円 - 5,040万円 = 1,338万円

持ち家が多く払う分。35年後に手元に残る住戸がこの金額以上の価値なら、持ち家のほうが有利になる

この比較の結論は「どちらが安いか」ではなく「35年後に1,338万円以上で売れるか」という一つの問いになります。都心の駅近か、人口が減る地域か。答えは正反対になります。持ち家か賃貸かという議論がいつまでも噛み合わないのは、この問いの答えが人によって逆を向いているからです。

上の表には管理費・固定資産税・購入時の諸費用(仲介手数料・登記費用・不動産取得税)・団体信用生命保険料・賃貸側の更新料や引越し費用を含んでいません。どちらにも上乗せがあり、持ち家側のほうが項目は多くなります。住宅ローン控除(控除率0.7%・最長13年)も持ち家側の負担を下げますが、ここでは反転する条件を見るために、両者に共通しない大きな項目だけを置いています。

住む年数が短いほど賃貸が有利になる

購入時の諸費用と売却時の仲介手数料は住む年数で割って考えるもので、10年で手放すならこの一時費用が年あたりの負担を大きく押し上げます。逆に完済後も住み続ける前提なら、ローンが終わったあとの住居費は修繕積立金と税金だけになるので、賃貸との差は年々開いていきます。

賃貸のほんとうの弱点は老後にある

総額の比較で賃貸が不利になるとは限りません。弱点は別のところにあります。

  • 収入が年金中心になっても家賃は下がらない。家計調査では65歳以上の無職世帯の持家率は95.8%で、統計上の「老後の平均的な家計」は住居費が月1.6万円しか入っていない
  • 高齢になると入居審査が通りにくくなる。保証人・家賃債務保証の確保が必要になる
  • 住み替えの自由は、体力があるうちの利点であって、要介護になってからの利点ではない

逆に持ち家の弱点は2つ。住み替えられないことと、資産価値が下がる地域では損失が確定することです。どちらの弱点が自分にとって痛いかは、勤務先の安定性・親の家の有無・地域の人口動態で変わってくるもので、金額の計算だけでは決まりません。

検証記録: 同じ人生を買う場合と借りる場合で引く

住まい以外を完全に同じにした2つのプランです。老後まで通した資産推移を見ると、差が開く時期がはっきりします。

ケースA: 5,000万円のマンションを35年ローンで買う

  • 借入5,000万円・金利0.7%・元利均等・35年
  • 月返済 13.4万円
  • 修繕積立金 月1.8万円(70㎡・中規模の平均値)
  • 完済後も同じ住戸に住み続ける

ケースB: 家賃12万円の賃貸で暮らし続ける

  • 家賃 月12万円が生涯続く
  • 住まい以外の条件はケースAと同じ
  • 老後も同じ家賃を払い続ける前提

ローン返済中は持ち家のほうが月々の支出が大きく、資産の増え方は鈍ります。逆転するのは完済後です。老後は賃貸側の家計が家賃の分だけ重くなり、どちらの線が上にいるかは、完済のタイミングと寿命のどちらが先に来るかという話にもなります。

決める前に確かめる5つ

  • 何年住むつもりか。10年以内の可能性があるなら、購入時と売却時の一時費用を年割りで確認する
  • 変動金利なら、金利が3%まで上がったときの月返済額を払えるか
  • マンションなら長期修繕計画の積立額が国土交通省の目安と比べてどうか。機械式駐車場があるか
  • 完済年齢が何歳になるか。退職後にローンが残る場合、退職金で返す前提になっていないか
  • その物件は、35年後に売れる立地か(人口動態・駅距離・建て替えの見通し)

この5つが揃えば、持ち家と賃貸のどちらが自分に向いているかは計算できます。出発点は、一般論の正解探しをやめることです。

よくある疑問

住宅ローン控除があるなら、やはり買ったほうが得ですか?

住宅ローン控除は年末残高の0.7%を所得税等から差し引く制度で、省エネ基準に適合する新築住宅なら最長13年間適用されます。負担は確実に下がります。ただし借入限度額は住宅の性能で異なり、入居年によっても変わるので、自分の物件が対象になるかを国税庁のページで確認してから計算に入れてください。

「家賃を払うのはもったいない」は正しいですか?

持ち家でも利息・修繕積立金・固定資産税・管理費は資産として残らない支出で、5,000万円を35年借りれば利息だけで数百万円から2,000万円台になります。残るのは住戸の売却価値の分だけです。支払総額がそのまま資産になるわけではありません。

戸建てとマンションはどちらが維持費が安いですか?

マンションは修繕積立金と管理費が毎月かかります。戸建てはかからない代わりに、外壁・屋根・設備の更新を自分で負担します。ならせば必要額は大きく変わりません。違いは、支払いが平準化されているか、10年〜20年ごとに数百万円単位でまとまって来るかで、後者は資金計画の難しさとして効きます。

タワーマンションは修繕積立金が高いのですか?

国土交通省の目安では20階以上の平均値は338円/㎡・月で、外壁修繕に特殊な足場が必要なうえ共用部分の割合も大きいぶん、20階未満の区分より高くなっています。70㎡なら月2.4万円前後。

この記事の前提と限界

次の点は計算に反映していません。結果を読むときはこの前提を踏まえてください。

  • ローンの計算は元利均等・繰上返済なし・団体信用生命保険料を含まない概算です。金利上昇のシナリオは「毎年0.2%ptずつ上がって3%で止まる」という仮定にすぎず、予測ではありません。
  • 購入時の諸費用(仲介手数料・登記費用・不動産取得税・印紙税)と売却時の費用、賃貸側の更新料・引越し費用はこの記事の比較に含めていません。
  • 住宅の資産価値と将来の売却価格は予測できません。この記事は「いくらで売れれば有利になるか」という条件を出すところまでで、価格の見通しは扱いません。
  • 固定資産税・都市計画税の税率は自治体の条例で定まり、軽減措置の要件も改正されます。金額は課税明細書と自治体の案内で確認してください。
  • 住宅ローン控除の借入限度額・要件は入居年と住宅の性能で異なります。最新の要件は国税庁の該当ページを参照してください。

出典

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本記事および本サービスの計算結果は、公的統計と一般的な制度に基づく概算であり、特定の金融商品の購入や投資判断を勧めるものではありません。税制・社会保障制度は改正されます。実際の手続きや判断にあたっては、一次情報および専門家にご確認ください。